2019年2月6日から、朝日新聞で成年後見制度についての10回の連載がありました。
普段、法人後見に取り組む者として注意深く読みました。読み終えて、正直この程度の連載だったのかと残念に思いました。確かに、毎回これまで成年後見制度の課題とされてきたことを丁寧に取り上げてはいました。
1回目の最後で、「促進法が施行され、利用促進の基本計画が閣議決定された。これまで財産管理に偏りがちな運用の見直し、利用者にメリットが感じられる制度に改善することや地域で関係関係が連携して利用を支援すること、不正防止徹底などがポイントだ」と触れて始まりました。
朝日新聞ですから、てっきりこれまで「財産管理の制度」とされてきた成年後見制度の改善、改革を追求するものと期待していました。
最後の10回目で、識者に聞くとして学者を登場させ、成年後見制度は「生活を守るための身上監護が制度の本質で、そのための財産管理です。」とし、「成年後見制度の改善と成年後見制度利用前からの意思決定サポートが必要性です。」と識者の言葉で、この10回の連載を締めくくっています。
厳しく論評すれば、この10回の連載は必要なかったのではないか。既に言われていたことをまとめただけではないか。
今、私たちが知りたいのは、成年後見制度の改革を具体的に、裁判所や行政、政治はどのようにやろうとしているかです。
この事に関し、昨年5月に最高裁は各地の家裁に、これからの成年後見制度運用の姿を示しています。その中には、「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」もあります。もっともこれについては、奈良弁護士会が早々と反対表明をしています。これについて、私たちは、利用者目線、国民目線から見て如何なものかと思っています。
裁判所の資料では、
「成年後見制度は認知症高齢者や障害者の生活を支えていくためのもので、裁判所で全てを抱えることは困難であり、裁判所・後見人・専門職・福祉行政の役割分担と連携の視点が重要」とありました。
成年後見制度の基本的な在り方について、私たちの考えは裁判所の考えと軌を一にしています。長年、生活保護の仕事に従事してきた私たちは、新しい成年後見制度としてスタートした時から、「成年後見制度は単なる財産管理の制度ではなく、生活支援、権利擁護の制度」と主張してきました。18年経って、ようやく裁判所が近づいてきてくれたと理解しています。
とすると、朝日新聞は取材不足ではなかったか。情報入手が遅れていると言わざるを得ません。裁判所の考えをもっと国民に明らかにし、それを実現するためには「政治の力」が必要です。成年後見制度利用促進法に取り組んだ「政治」をもっと取材し、書くべきではなかったのかと悔やまれます。しかし、それは期待が大き過ぎたのかもしれません。朝日新聞がいつか書くことを期待します。(2019.02.21)